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G. K. Chesterton Heretics I

G. K. Chesterton Heretics I
【関心・疑問】

【論文名】
一 初めに――正統の重要性について

【著者名】
G. K. Chesterton (別宮 貞徳訳)

【書名・(巻・号)・出版社・出版年・(版)】
Heretics ; Orthodoxy ; The Blatchford Controversies, The Collected Works of G.K. Chesterton;1, San Francisco: Ignatius Press, 1986, pp.39-46
(『異端者の群れ』東京: 春秋社, G. K. チェスタトン著作集; 5, 東京: 春秋社, 1975年, pp.3-13)

【本文の構成】
一 初めに――正統の重要性について
二 否定的精神について
三 ラドヤード・キプリング氏と世界の矮小化について
四 バーナード・ショー
五 ウェルズ氏と巨人
六 クリスマスと唯美主義者
七 オマールと聖なる葡萄
八 赤新聞のおとなしさ
九 ジョージ・ムア氏の移り気
十 サンダルと単純性について
十一 科学と未開人
十二 異教とロウズ・ディキンソン氏
十三 ケルト族とケルトびいき
十四 ある現代作家と家族制度について
十五 ハイカラ小説家とハイカラ仲間
十六 マッケイブ氏と崇高なる軽薄について
十七 ホイスラーの機智について
十八 新興国の謬説
十九 スラム小説家とスラム街
二十 おわりに――正統の重要性について

【内容の要約(ページ数)】

【引用したい文章(ページ数)】
 現代社会の途方もない、ひそかな害悪をこれ以上奇妙に示しているものはないと思われるのは、「正統」という言葉の昨今のでたらめな使い方である。昔は、異端者は異端でないことを誇りとしていた。世俗の王国、警察、判事こそ異端で、自分は正統だった。そういうものに反逆して得意になっていたのではない、そちらが彼に反逆していたのである。残酷無惨な保護を加える軍隊、冷酷非情なおもてを向ける国王、うわべだけそつのない国家、筋だけ通っている法律――皆迷える羊で、彼みずからは正統たることを誇り、正しいことを誇っていた。さびしき荒野にただひとり立っていたにせよ、彼は人間以上のものだった。教会だった。彼は宇宙の中心、彼をめぐって星は動いていた。忘却の地獄の淵からとり出したありとあらゆる責苦をもってしても、彼に自分は異端であると認めさせることはできなかった。ところが今日、彼はほんの二言、三言で、異端であることを自慢するようになっている。わざとらしい笑いを浮かべて彼は言う、「私は自分がたいへんな異端者なのだろうと思っております」。そして、拍手喝采を期待してぐるりと周囲を見まわす。「異端」という言葉は、もはや悪を意味しなくなったどころか、事実上、頭がよく勇気があることを意味し、「正統」という言葉は、正しさを意味しなくなったのみならず、事実上、悪を意味するようになっている。これはどういうことか。そこには一つのこと、たった一つのことが示されている。つまり、人びとは自分が哲学的に正しいかどうかなどさして気にとめなくなったということである。なぜと言って、自分の頭がおかしいことをまず認めておかなければ、自分が異端であることを認められるわけがないではないか。赤ネクタイのボヘミアンは、自分が正統であることを鼻にかけているにちがいないし、爆弾を仕掛けるテロリストは、何はともあれ自分が正統であることだけは感じているはずだ。(p.39; 邦訳p.4)

 かくのごとく、政治の世界においても文学の世界においても、一般理論の拒否はよい結果を生まぬことが明らかとなった。往今、折に触れて多くの気ちがいじみた、誤解を招く理念が人類を惑わせたこともあったであろう。しかし実際上、実際性の理念ほど気ちがいじみた誤解を招く理念はかつてなかったにちがいない。ローズベリ卿のご都合主義ほど都合のよい時機を失したものはかつてなかった。彼はまさしくこの時代の生ける象徴である――理論上は実際的であり、実際上はいかなる理論家よりも非実際的なこの御仁は。この世で、この世の知恵を崇めるほど知恵のない所業はない。終始、この民族が強いかあの民族が強いか、この主張が有望かあの主張が有望かと考えてばかりいる男は、何にせよそれが成功に至らしめるまで長く信じつづけるということが決してない。ご都合主義の政治家は、玉突きで負けたからもう玉突きはやらない、ゴルフで負けたからもうゴルフはやらないという人に似ている。即座の勝利をこのように途方もなく重視する態度ほど、目的貫徹のために弱腰なものはない。成功ほどあとがつづかぬものはないのである。(pp.44-45; 邦訳pp.11-12)

【コメント】