Five Solas

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Friedrich August Hayek Socialism and War X

Friedrich August Hayek Socialism and War X
【関心・疑問】

【論文名】
X 科学と社会主義

【著者名】
Friedrich August Hayek (尾近 裕幸訳)

【書名・(巻・号)・出版社・出版年・(版)】
Bruce Caldwell (ed.), Socialism and War: Essays, Documents, Reviews, The Collected Works of Friedrich August Hayek; 10, Chicago: University of Chicago Press, 1997
(『社会主義と戦争』ハイエク全集; 第2期第10巻, 東京: 春秋社, 2010年, pp.163-176)

【本文の構成】
第1部 「計画」はなぜ間違うのか
 I 知識人と社会主義
 II 計画、科学、および自由
 III 自由と経済体制
第2部 社会主義の「経済学的」欠陥
 IV 計画化の経済学
 V 無知への対処
 VI 社会主義計算論争とはなんだったのか――フィクションの2ページ
第3部 「戦争」の経済問題
 VII 価格による配分対配給制
 VIII 資本の節約――利子率の役割をめぐって
 IX 「大戦」に関連した文書
第4部 二つの「道徳」
 X 科学と社会主義
  1 はじめに
  2 科学的問題か、それとも価値の問題か?
  3 道徳の進化
  4 古い道徳と新しい道徳の対立
  5 現在の諸問題の原因
  6 現代経済学の欠点
  7 今後の課題
 XI 社会主義はなぜ反動的なのか
 XII 資本主義の道徳とはなにか

【内容の要約(ページ数)】

【引用したい文章(ページ数)】
 ここで、社会主義の歴史において連帯という観念が果たした役割、つまり、今日にいたるまでの社会主義者の議論において、利他的な訴えが繰り返された回数を考えてみるとよい。いうまでもなく、この教説は多くの賛同を得た。すなわち、その内面に受け継がれた本能がいまだ活発で、今では評判が落ちてしまった伝習道徳によってかろうじて抑制されているような人びとが、そうした考えに接するにいたったのだ。(邦訳pp.172-173)

 われわれが置かれているのはこうした状況である。そして、私は、イギリスのある政治家[ウィリアム・ハーコート]が九〇年前に、今やわれわれはみな社会主義者である、と述べたことが、反社会主義者の大多数にさえ当てはまるようになったのではないかと危惧している。社会主義にたいする反対者たちでさえ、連帯や利他主義の望ましさのような根本的な道徳的真理をわれわれの経済活動に適用すべきであるかのように感じている。そうした世界は素晴らしいものかもしれないが、今日においてそれはもはや不可能なのである。それにもかかわらず、ジョン・スチュアート・ミルのような人びとは、今はまだ社会主義社会を実現するための準備が整っていないけれども、早晩、必ずやその日が来ると夢想したのである。そしてそのように考えたのは、そうしたわれわれの体内の奥底にある根本的な道徳的本能を永遠に抑え込むことはできず、最終的にはそうした本能が勝利を収めると信じていたからだ。(邦訳p.173)

 われわれは次のことを認めなければならない。具体的な目標の追求から、[価格という]まったく抽象的なシグナルを観察することへの行動の変化は、世界的な規模での分業を可能にした唯一の方法であっただけでなく、どんな一人の人間がもつよりももっと多くの情報を利用することによって、世界に生きる現在の人びとの生活を可能にしている経済体制を維持するためのたった一つの方法なのである。(邦訳p.173)

6 現代経済学の欠点

 こうした点について、価格システムが、われわれの繁栄のみならず、世界の人口の大部分の生存にとっても必要不可欠なものであることを公衆にたいして明らかにすることを怠っているという意味で、私は、現代経済学はその責務を果たしてはいないのではないかと考えている。市場で決定される価格は、われわれが知りえない事態や状況にわれわれの活動を適応させるために絶対に欠くことができない。経済学者たちが大きな誤解を招いたのは――ここで私は、こうした問題点について考えはじめた「経済学と知識」(1)という四〇年前に公表した論文の主題に立ち返るつもりである――所与の条件が社会の具体的なあり方を決定する仕方を見事に説明することにつとめ、そうすることで、所与の条件さえ得られるなら意識的に考案された組織によって実際よりも資源をより良く利用することができるというように示唆した点である。(邦訳pp.173-174)

【コメント】