Five Solas Ministry

主なる神の言葉である聖書を、あらゆる事柄に関する最高権威、人生における規範とし、イエス・キリストを主とする神の国(支配)の拡大と完成を願っています。

青木『アメリカ福音派の歴史』p.354

青木 保憲『アメリ福音派の歴史――聖書信仰にみるアメリカ人のアイデンティティ』明石ライブラリー; 151, 東京: 明石書店, 2012年, p.354

〈引用〉
 1968年3月に起きた「ソンミ村事件」は、ベトナム反戦運動の拡大に大きな影響を与えた。この事件を伝えたのはテレビであり、新聞報道であった。無実の民間人が戦火に巻き込まれていく様子は、枯葉剤を散布する空軍の模様と共に、メディアを通じて人々に毎日届けられた。アメリカ国民はテレビ放送を通じて戦闘の悲惨さを実感し、アメリカのベトナム介入に対して、次第に疑問を持つようになっていった。教会指導者の道徳的反論戦もいくばくかの影響力を持っていたであろうが、やはりマスメディアの影響力の方が大きかったと言うことができる。
 メインライン諸教会の指導者たちは「結果としての」ベトナム反戦運動の拡大を、公民権運動から連なる教会の政治活動の成果と捉えた。一方、信徒たちは、結果ではなくその「過程」における教会の姿勢に違和感を抱くようになっていた。両者の意識に乖離が生まれていたことは確かである。そしてこの乖離は、コーベットが図らずも述べているように、「自分たちは預言者的な働きをしている」という自負が生み出したといっても過言ではない。信徒たちがお茶の間で戦争の悲惨さを追体験したということは、生活の中に「戦争」が入り込んできたということである。つまり人々は「肌で実感する」過程を通して、やっと戦争を体験できたということになる。一方、指導者たちはそのような「肌で実感する」過程を省いて、いきなり結果としての「戦争反対」を提示した。信徒たちからすると手触りのない、空虚な道徳論を説いているとしか感じられなかったであろう。
 この乖離現象を敏感に感じ取った福音派根本主義者たちは、カウンター・カルチャー時代から70年代後半にかけて、保守的な考え方へと彼らを導いていった。